FC2ブログ
<<08  2019,09/ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  10>>
『横道世之介』
CIMG3594_convert_20100714220448.jpg


大切に育てるということは
「大切なもの」を与えてやるのではなく
その「大切なもの」を失った時に
どうやってそれを乗り越えるのか、
その強さを教えてやること



吉田修一という作家の『横道世之介』(毎日新聞社)
という小説の一文だ。
吉田修一は、好きな作家で、
どの作品にも、痛いような、ひりつくような、えぐられるような、
思わず、息をとめてしまうような描写やセリフがある。

ふだん、見ずにすごしてきたことについて、思いが及び、
胸をぎゅっとつかまれたように、
しばらく、小説世界のなかで、立ちつくしてしまう。
テーマも深い。
何度でも読みかえしたいと感じる作品を書く作家のひとりだ。 


そんな吉田修一の最新刊が、夫の部屋にあった。

「えーっ てんちゃんが、なんで、吉田修一?」 

夫とわたしは、読む本のジャンルが、まったくちがう。
わたしがよく読む作家とは、かぶらない。

「書評で、めっちゃ、評判がよかってん」
「は?」

吉田修一の小説なんて、ほとんど読んだことのないだろう夫が、
図書館のインターネットサービスで『横道世之介』の貸出予約をしたのは、
彼が愛読(書店で立ち読み)し、信頼している「本の雑誌」で絶賛され、
ネットのあちこちで、評判になっていたから だそうだ。

「わー いいなー わたし、吉田修一、好きやねん! やったー! あとで読ませてな」
「おれ、読む本あるから、先に読んでいいよ」
「わーい」

というわけで、読みはじめたのだが、
うーん。
別の作家の作品を読んでいるのではないかと、何度も思った。
(これが、吉田修一?)
なんか、ちがうなあ… と思いながら、
だらだらと、何日もかけて読んでいて
(だって、山とか谷とか、なんにもないのだ。
 飄々と、亡羊と、漠々と
 どこに流れつくのだろう…)
と、感じていたら

いきなり、思ってもみなかった展開! 

(ええぇーーーーっっっ!!)

斜め読みしていたら、見過ごしてしまう。
地の文みたいに、さらりと、書いてあり、
信じられなくて、ページをもどって、二度読んだ。

ずっと乗っていけると思っていたバスから、
とつぜん、降車を強いられたような動揺で、
思わず、裏表紙までの残りの分量を確認しながら、
(ちょっと待って! 置きざりにしないでーーー!)
(どういうことー?)

気持ちを落ちつけ、残りの少なさに焦りながら、
裏切られた気持ちで、読みすすんでいくと、
ふいにあらわれた。

大切に育てるということは
「大切なもの」を与えてやるのではなく、
その「大切なもの」を失った時に
どうやってそれを乗り越えるのか、
その強さを教えてやることなのではないかと思う



…この一文だけで、いい。

つづけていて、よかった。
飄々とした、亡羊とした、漠々とした、『横道世之介』の旅を。
途中でやめないで、よかった!

これは、小説のテーマではないのかもしれないけど、
そんなこと、かまわないのだ。


毎晩、子どもたちが寝息をたてる寝室に、よつんばいで忍んでいく。
ねぞうを直し、タオルケットをかけなおし、
大きくなったなー と、感慨にふけり、
ほっぺたをつつき、ちんまりした鼻をつまみ、
ダイビングするみたいに、ほっぺたにチューをして、
むぎゅむぎゅむぎゅむぎゅ、反対側にもチューをして、
おでこにもチューをして、なめらかな肌に顔をうずめ、
香ばしいようなにおいをかいで(子どもたちは、このくらいでは起きない)、
はじきとばされそうにダイナミックなコツメの「伸び」をかわし、
(こんな伸びは、大人には、もはやできない…)
半ばあきれ、半ば感心し、
細胞があたらしく生まれかわる瞬間を見守り、
リアルな寝言に、思わず返事をしてしまいそうになりながら、

(今晩からは、このことを願おう)

そう、誓った。

大切なものを失ったときに、のりこえていける心。
どんなことでも、のりこえていける心。
強い心。折れない心。

教えられるだろうか。
強くなりたい。
わたしこそ、もちたい。

折れない心を。

女性を、母親にするために、子どもたちは、そだつ。
無限の引きだしを、
はしりまわり、とびまわり、あけていく。
無邪気に、無防備に、無頓着に。

そういえば、『横道世之介』には、母親が、たくさん、登場する。
みんな、カラーがちがう。
最後のページは、世之介の母親の手紙だ。
そして、余白へ。

世之介は、余白にいる。
『横道世之介』は、余白のものがたりだ。

                     (ゆ)

スポンサーサイト



テーマ : ママのひとりごと。
ジャンル : 育児

Secret
(非公開コメント受付中)

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
ご連絡はこちらから
鑑定の予約・質問・感想など、お寄せください。

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
プロフィール

浜田 えみな

Author:浜田 えみな
こんにちは! ブログに来てくださってありがとうございます! H11生まれの長男と、H14生まれの長女の二児の母です。文章を書くことが好きなので、フルタイムで仕事をするかたわら、あれこれ書いています。H26年8月に薦められた短歌にハマり、現在その世界観を模索中です。よろしくお願いします。