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本気
本気って、どういうこと?
本気を見せるって、どういうこと?
本気って、なに?
本気になるって、どういうこと?
本気って、どうやって伝えるの?
本気って、どうやって、証明するの?
結果が出せなきゃ、本気じゃないの?

…… そうなんだろうな



    *      *      *

なんで、ドッジボールなんて、やってるんだろう?

不器用で、力の使い方がわからなくて、
キャッチもアタックも得意じゃなくて、
ねらうのもねらわれるのも怖くって、
性格的にも、前に出るほうじゃなくて、
何歩でも後ろにさがっているタイプで、
めだたないのが好きで、むきだしの闘志なんかなくて、
たくさんの人の中では萎縮して、思っていることを外に出せなくて、
言われたことにもすぐに反応できなくて、
どうしていいのかわからず、
中途半端に笑って、もじもじしているだけで、
何か言ってくれるのを待って、すぎていくのを待って、
めそめそして、いつまでたっても、同じ過ちのくりかえしで、
何度注意されても、ちっとも進歩できないのに、
どうして、つづけているんだろう? 
リクトは。

すぐに当たる。一番に当たる。
大事なときに当たる。残り数秒で当たる。
ボールを見ていない。集中していない。
ディフェンスが遅い。逃げている。

4月からずっと言われてる。
そのたびに、がんばりますと言う。

でも、すぐに当たる。一番に当たる。
大事なときに当たる。残り数秒で当たる。

背番号の順位がどんどんさがっていく。
年下の子に抜かされる。

なんとも思ってないの?

思ってないわけはないのだろうが、プレイに反映しない。
ドッジボールは個人競技ではないから、
当てられるとチームの士気がにぶる。

キャッチするのと、アウトになるのでは、
コートの「気」が全くちがう。
小学生だから、この「気」の波は大きい。
勝敗を左右する。
五分間の競技なのだ。

    *      *      *
    
チームの進退をかけた大事な公式戦の予選リーグで、
リクトは、さんざんだった。

すぐに当たる。一番に当たる。
大事なときに当たる。残り数秒であたる。
逃げて当たる。
最低だ。


後はあるのだろうか? もう、ないかもしれない。
最後の試合かもしれないと、わかっているのだろうか? 

もしも、もう一度、監督がチャンスをくれたら、
リクトはどう応えるつもりなんだろう?

どうやったら、あの子の「本気」に火がつくのだろう? 
「本気」と行動が、結びつくのだろう?
「本気」の結果が、出せるのだろう?

本当のことを言うと、もう、やめさせたかった。
ほかの子たちは、運動神経のいい子ばかり。
あとから入団して抜かされると言ったって、
もともとの身体能力がちがうのだ。
性格もちがう。

ボールをキャッチすることが、好きで好きでたまらない子ばかりだ。
激しいものを持った子ばかりだ。

ドッジボールなどという競技は、いちばん、リクトに向いていない。
的でもなく、ゴールでもなく、バットやミットやラケットでもなく、
「人」にボールを当てて点を取る競技なんて。

うまくならなくてもいいとさえ思う。

もっと、リクトの性格にむいた、
もっと、結果の出せる、
泣かなくても、真面目に練習するだけで、
伸びていくような種目があるはずなのだ。

    *      *      *

リクトのポジションにボールがとぶ。
「まかせておけば、大丈夫!」と、思われず、
「ああ、ダメだ」と、思われる。
残りの十一人全員に思われる。

そんななかで、もう、続けなくても、いい。
背番号の挽回もできず、レギュラー落とされて、
それでも、本気が出せないのに。

    *      *      *

ドッジボールは、結果を出せなくても、
独りで、もくもくとやっていればよいスポーツではない。

コートも、ベンチも、団員すべての「気」をつないで、
ひとつになって取りくむ競技だ。

信頼に応えなければいけない。
信頼してもらわなければいけない。
信頼しなければいけない。

キャッチできたかどうかじゃない。
アウトになってもいいのだ。
でも、ボールに向かう集中力の有無や気合は、観ていてわかる。

ぜったい捕る! 
全球キャッチする! 
落とさない! 

そういう気迫。
リクトには、それが、見えない。

って、小学生の息子に。
ほんなら、母親の自分はどうやねん? 

    *      *      *

リクトは、さんざんだったが、チームのみんなの頑張りで、
決勝トーナメントに進出することができた。
トーナメントを勝ちすすみ、迎えたのは、
入賞をかけた、大事な一戦……

一人当たることが命とりになる。
しょうもない当たりかたはできない。

リクト、がんばれ!
今日、このまま終わったら、ダメだ。
このまま、帰ったら、ぜったいに、ダメだ。

だれが信頼してなくても、おかあさんには、みえる。

リクトはできる。
キャッチできる。
このまま終わったら、ぜったいに、ダメだ。

できる。できる。できる。

    *      *      *

ボスッ!

沈むような、重い音がコートにひびく。
かがみこんで、キャッチしている!
だれ?
だれが捕った?

リクトだ!
リクトが、キャッチした!

ボスッ!

また、捕った!
次のボールも、リクトが、キャッチした!
二度もキャッチした!

コートの流れが変わり、アタックがどんどん決まって、
チームは、三位入賞することができた。
今期、初めての入賞だ。

リクトは、本気を見せた。

    *      *      *

何か、声をかけてやろう。

うちのチームは、集合時に、監督とコーチに預けたら、
解散するまで、自分の子どもに、母親として、
声をかけることはできない。

でも、こっそり。

着がえて出てくるところを、首をのばして待っていると、
わたしが立っているのを気配で感じたリクトは、
ちらっとこちらを見て、すぐに視線をそらす(こらこら)。

ここで、ピースサインをしたり、
にこにこ笑ったりしないところが、
リクトのリクトたる所以というか、なんというか……。 

怒られると思ってる? 
テレくさいと思ってる? 
わたしがどう思っているかが、わからないのだ。

目をそらしたまま、行きすぎようとするので(おいおい)、
頭のうしろを、てのひらで、パコ。

髪にふれるやいなや、リクトの目元がゆるみ、
ほっぺたが、もりあがり、
湧きあふれてきた笑みで、大きな前歯がこぼれだす。
でも、こっちはむかない。

横をむいたまま、目じりをさげて、ゆるむ口もとをこらえて、
必死で、口をとじよう、結ぼう、としているのだけれど、
もう、とじられない。

みるみる鼻にシワがよって、ニコニコ笑って、
くしゃくしゃの笑顔のまま、
ちらっとだけ、わたしを見て、
みんなと一緒に、出口に向かっていった。

(なんだ、やっぱり、「やった!」って、思ってたんだ)

なにも言わなくても、「パコ」で通じる。
てのひらに、リクトの髪の、さらさらの感じが残っている。

リクトは、本気を見せた。

    *      *      *

わたしは、どうなの?

本気って、どういうこと?
本気を見せるって、どういうこと?
本気って、なに?
本気になるって、どういうこと?
本気って、どうやって伝えるの?
本気って、どうやって、証明するの?
結果が出せなきゃ、本気じゃないの?

そうだ。
そのとおりだ。

本気を見せろ。
結果だ。

                 (ゆ)
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テーマ : ママのひとりごと。
ジャンル : 育児

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浜田 えみな

Author:浜田 えみな
こんにちは! ブログに来てくださってありがとうございます! H11生まれの長男と、H14生まれの長女の二児の母です。文章を書くことが好きなので、フルタイムで仕事をするかたわら、あれこれ書いています。H26年8月に薦められた短歌にハマり、現在その世界観を模索中です。よろしくお願いします。