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『蕾』
この先、その太い足で、
何に向かって、駆けていくのか
笑顔も泣きべそも、覚えているよ
とどかなくても、応援するよ
何度でも言うよ。そのことで頑張れるのなら
一生、支えになるのなら


* * *

アホな子犬のような子だと思う。

犬を飼ったことがないので、アホな犬というのが、どういうものなのかわからないけれど、アホな子犬はかわいいだろうなあと思うのだ。

何度教えても、最低限の躾も、自分の役割すら理解しなくて、毎回同じことを言わせて、腹もたつし、あきれはてるけれど、むくむくの太い足とか、ふさふさの力強い尾とか、全身で喜びや悲しみを表現するところに、いつだって不覚にも心をわしづかみにされるというか。

* * *

大きな目をした子どもを持つご両親のほとんどが、ディズニーの『ファインディング・ニモ』の、ふるふる揺れる、ほうっておくことのできない、どでかいタレ目に、自分の子の表情を見ていたように、わたしたち夫婦も大画面のニモを観た瞬間、

(わあ、リクトや!)

とウルウルしたけれど、それは「保育園」のときの話だ。
成長すれば、それなりにキリリとすると思っていた。
ところが、どうだ。もう十二歳なのに、まだ、あんな、とろとろした目をしている。

(なんで?)

目は大きければいいわけではない。
心の動きや意志を映す窓のようなものだから、リクトのように、なんにも考えてない子は、無防備にモニター画面を大きくしてはいけない。

(なんで、こんなに、ぼーっとしているのか?)
(なんで、こんなに、しまりがないのか?)
(なんで、こんなに、アホそうに見えるのか?)

授業参観で、運動会で、ドッジボールの体育館で、毎回思う。

(アホだから)

賢くなれとは言わないけれど、せめて、賢そうな顔をしてほしい。その、まっしろな頭の中に、なんでもいいから、画像を入れてほしい。ホントに何も考えていないのだろうか? 頭の中は、常に「妄想」だらけの私からすれば、理解できないことだ。一度、頭の中を、のぞかせてもらいたいと思っている。

ドッジボールのコーチに
「リクトは、何を考えているの?」
と訊かれても
(たぶん、何も考えていないと……)

チームのママたちに、
「オンとオフの差がいい!」
と言われた時は、ものは言いようだと思った。ほとんどオフのリクト。

(オンのときっていったい、いつなんだ?)  

* * *

「おかあさん、りっくんは“ひとえまぶた” がよかった。“ひとえまぶた”に産んでほしかった」
「え?」

何をいうのだ。この子は…… 
「でっかい二重瞼に産んでくれてありがとう」と、お礼を言ってもらえこそすれ、一重に産んでほしかったと恨みがましく言われるなんて、思いもしなかった。

「てんちゃん! りっくん、一重瞼になりたかってんて!」
「えええっ なんでやねん。みんな、二重瞼になりたくて、テープ貼ったり、手術したりするんねんで。二重でよかったやないか」
「今、一重瞼の人なんて、おらへんやろ? おかあさん、一重瞼の子なんて、みたことないで。みんな、目の大きな子ばっかりやんか」
「ちがう。りっくんのまわりの人は、みんな、ひとえやもん!」
「ほんま? だれが、一重?」
「○○くんも、△△くんも、××くんも、□□くんも、◎◎ちゃんも……」
(たしかに、言われてみれば、ドッジボールチームの子たちは、一重瞼!)

「なんで、一重瞼になりたいの?」
「強そうやから! ドッジがうまい人は、みんな、ひとえまぶたやねん!」

一重瞼やから、アタックが決まるんとちゃうでー!!

* * *

ラブラドールリトリバーの子犬のポスターを見たとき、その三角のたれた耳と、三角のたれた目と、なさけなそうな、でも、ほうっておけない表情に

(リクトの目そっくり)

と思った。
ラブの子は、そもそも賢いのだろうけど、アホなラブの子は、きっと、もっとかわいがられているのだろうなあと思いつつ。

* * *

テレビを見ないし、レンタルやダウンロードで音楽を聴くこともしないから、コブクロの「蕾」を聴いたのは、一週間ほど前だった。耳に残ったフレーズがあったので、帰宅してから調べると、十八歳のときに亡くなったお母さんのことを歌ったものだということがわかった。あらためて、歌詞を読み、ユーチューブで、二人が歌っているところを、はじめて観た。

世の中のお母さんがすべて、こんなふうじゃなくていいし、こんなふうなわけないし、子どもだって、こんなふうに頑張れるわけじゃないし、こんなふうに結果を出せるわけじゃないし、親に感謝なんてしなくていいし、親子は決別することだってあるし、わかりあえないこともあるし、お互いに与えるものや受けとるものが、否定的な場合だってあるし、そもそも結婚しない人がいるし、子どもを産まない人がいるし、そういうことをぜんぶ包括した上で書くけれど、わたし自身は、結婚をしたし、子どもを産んだし、男の子と女の子の母親になったので、小淵さんの熱唱を観ながら、

(アホな子犬みたいなリクトも、なんとか自分なりに頑張ることを見つけて、生まれてきたことをよかったと、笑顔で思ってほしいな)
と、胸がいっぱいになったのだった。

で、休日の朝、だらだらと朝寝坊しながら、夫と、

「リクトはこのままで大丈夫なのだろうか?」

という話になった。

こんなにアホで、自分に対して言われたことしか習得できなくて、臨機応変に対応することができなくて、女の子とつきあったりできるのだろうか? 学校で教えてくれないこと、教科書に書いていないことを、どのようにして得ていくのだろうか? 

友だちから? 友だちが正しいとは限らない。 
DVD? おかしなDVDでそれが正しいやりかただと思ってしまったらどうしよう! 

「じゃあ、ホストの人とかは? 女の子の気持ちとか接し方とかプロやん! てんちゃん、ホストのお友だち、おらへんの?」
「友だちはおらへんけど……」

知り合いの息子さんが高校のときに家を出て、ホストになり、店でベスト5に入るような売れっ子になっているのだそうだ。ほとんど連絡がないので、お母さんは、その店のホームページを見て、

(元気でがんばってるなー)

って思ってるのだそうだ。

(『蕾』 だなあ…)

“聞こえない「頑張れ」”
というのが、初めて聴いたとき、流れ去っていく歌声の中で、耳に残ったフレーズだった。
どんな情景がつむぎだされている歌なのかが知りたくて、歌詞を調べた。
小淵さんの熱唱を観た。

仕事を終えて疲れて帰っても、ただいまも、おかえりも言えない。真夜中のホームページでしか見れない息子の笑顔に、いろんなことを話しかけているのだろうなあ。

(『蕾』 だなあ…)

* * *

男の子は、何歳になっても、子犬のようなかわいさがある。

アホな子犬のようなリクトが、この先、その太い足で、ちぎれるように尾をふり、何に向かって、駆けていくのか。
笑顔も泣きべそも、お父さんもお母さんも覚えているよ。とどかなくても、応援するよ。
まだ、十二歳。声が届くうちに、何度でも言うよ。そのことで頑張れるのなら。一生、リクトを支えてくれるのなら。

でも、つい、怒ってまうねんなー(笑) 
私にはリクトの、まっしろな頭のなかは、まったく理解できないから(脱力)
なんで、そんなに、魂を抜かれたような表情ができるのか、教えてほしいです。
とびきりの笑顔をもっているのに。

ほかにも、いろいろ、こっそり自慢なのに。

浜田えみな

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テーマ : 物書きのひとりごと
ジャンル : 小説・文学

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浜田 えみな

Author:浜田 えみな
こんにちは! ブログに来てくださってありがとうございます! H11生まれの長男と、H14生まれの長女の二児の母です。文章を書くことが好きなので、フルタイムで仕事をするかたわら、あれこれ書いています。H26年8月に薦められた短歌にハマり、現在その世界観を模索中です。よろしくお願いします。