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循環ポンプ
母になったことで、わたしが手にいれたものは、
与えることと受けとることの
循環サイクルかもしれない

与えようと思わずにさしだしているから、
ひらいた心に入ってくる。
受けとろうと思わずに受けとっているから、
みたされて、あふれだす
そういう循環ポンプだ

からっぽじゃそそげないけど、
からにしないと受けとれない

*   *   *

コツメは、保育園からのときから仲のよいMちゃんと、子どもたちだけのサマーキャンプに参加している。
二泊三日だ。土砂降りの中、ポニーテールの後れ毛を雨粒で濡らし、大きなリュックを背負って、元気に出発していった。
コツメは雨女だ。

というわけで、うちのおじょうさまのいない日々……
空気がクリーン? 平和? 静か! 

あれれ。
リクトだけがテーブルについて、ぼやーんとしていても、違和感がない。あらら。
子どもは一人だったと言われても、そうかな? と思いそうなくらいだ。おやおや。

いればかわいいし、世話もやくけど、いなくても、ほかに用事はたくさんあるので、気にならない。
というのが、わたしとてんちゃんの子どもにかかわるスタンスだ。コツメも、きっと、家族のことなど、思いだしもせず、笑い転げているだろう。
顔じゅうのパーツがバラバラに放散して収集がつかないコツメの笑い顔が、すぐに思いうかぶから、姿が見えなくても、いつも安心なのかもしれない。
(え、ちがう?)

*   *   *

Mちゃんはひとりっこだから、さぞや、お父さんがさびしがっているのでは… と思っていたら、Mちゃんママから
「ダンナが “明日、帰ってくるねんな” って、朝から三回も言ってます」
というメールがきたので、笑ってしまった。
うちは……? 
まさかそんなことはないと思うけど、訊いてみる。

「てんちゃん、コツメがいなくて、さびしいって思ってる?」
「いや」
「そうやんなー ぜんぜん、思えへんよねーっ。Mちゃんのお父さん、さびしくて、朝から三回も、“明日、帰ってくるねんな” って言ってるねんてーっ。ひとりっこやからかな」
「Mちゃんは、かわいいもん! あんな子やったら、そらさびしいで。アイドルみたいやん」
「めっちゃ、かわいいよねーっ Mちゃんは、親にモンク言ったりせーへんのやろな」
「コツメは、えらそうやもんな」

しつけをまちがえたんです。わたしたち(笑)

いや、ホント。
“セレスティーヌ”を読みながら、

(コツメにそっくりやん!!)

と、何度も思った。

「しつけに失敗したんだ!」

という女子学生の声が、耳に痛かった。

セレスティーヌの、いじらしいワガママにふりまわされながら、ご機嫌とりに翻弄するアーネスト、セレスティーヌにオシリを叩かれて、ようやくエンジンがかかりだすアーネスト、乙女ごころを全く解さないけれど、セレスティーヌを一瞬で幸せな気持ちにする魔法を、ちゃんと心得ているアーネストは、コツメとてんちゃんにソックリだなあと思う。
二人の会話や、うしろ姿は、ソックリすぎて、しみじみ泣ける(いや、笑う)。 

トランプや、ボードゲームや、DSや、工作や、アニメの話や、映画や、学校の宿題まで、アーネスト:てんちゃんは、セレスティーヌ:コツメに、オシリを叩かれ、えらそうに指示されながら、仲よくやっている。
コツメは、父親だなんて思っていない感じがする。
友だち? 同格? ひょっとして家来? 

(子どもたちにつきあって、えらいなあ…)

と、てんちゃんには感謝しているけれど、自分自身が、アニメもゲームも好きなのだ。子どもより、真剣な顔をしているので、あきれはてる。

アーネストも、はじまりは、セレスティーヌの希望や願いでありながら、いつしか夢中になって、のめりこんでしまい、まわりの人も巻きこむようなミラクルや、ビッグサプライズに発展するのだ。

自分が楽しむ!
役割を演じるのではなく! 演じさせられるのではなく!

*   *   *

リクトとコツメが乳幼児のとき、わたしも夢中だった。誰に頼まれたわけじゃない。そうしたいことだけを、存分に、やったのだ。

毎日、添い寝して、手遊びして、読み聞かせして、いちにちじゅう遊んで、おしゃべりして、お散歩して、おっぱいあげて、離乳食も手作りして、育児本も読んで、いいと言われていることは、みんなやって、赤ちゃんマッサージもやって、生まれたばかりの赤ん坊が、少しずつ、知識を得て、成長していく過程を、自分の腕のなか、五感のすべてで感じとれることは、一秒ごとにエキサイティングな喜びなのだった。

*   *   *

コツメは、小さくて、きゃしゃだった。
リクトは、骨太でがっつりしていて、どんな抱き方をしても、軸のようなものを感じたが、コツメは、手も足も小さくて、ふにゃふにゃでやわやわで、羽のように軽かった。

*   *   *

リクトのときは、おっぱいを飲んで眠った瞬間から、次に目を覚ましたときの心配をしていた。おっぱいが出るかどうかが不安だった。これから先の漠然とした育児に対する心細さもあり、産院から帰宅した最初の夜なんて、

(もう、戻せない)

と、言い知れない心もとなさで、思わず、並べた布団の上で、リクトに背中を向けてみたりして(笑)、ささやかな抵抗をしたことがあったけど、コツメには、そんなことは一度もしなかった。
生まれてきた瞬間から、抱きしめたし、話しかけたし、“わたしがお母さんだ” と言えたし、迷いなどなかった。

コツメは、ちっちゃいときから、よく笑い、よくしゃべり、感情がわかりやすくて、エラそうだった。教えるとなんでもできた。手も足も、ちいちゃかった。リクトが新生児だったときより、サイズが小さくて、肌着も靴も買いなおさなければならなかった。リクトが保育園から帰ってくる夕方から、おふろに入れるまで、毎日、ずっと泣いていた。かなり横隔膜と肺が鍛えられたはずだ。
頭だけは、デカかった(笑)

*   *   *

おかしい。
なぜ、コツメは、あんなにエラそうなのか??
なぜ、あんなに「自己肯定感」が強いのか?
なぜ、自分が「愛されていること」を、少しも疑わないのか?
なぜ、いつでも「守られている」と、信じることができるのか? 

まだ、足元がおぼつかなくて、うまく歩けないようなときでも、平気で、すべり台やジャングルジムを登っていき、まったく、うしろを確認することなく、手をはなしたり、足をすべらせたりしていた。

(!!!)

「うしろにオレがいなかったら、どうするつもりなんや?」

てんちゃんは、しょっちゅう、そう言って、コツメを抱きとめていた。
うんていなんて、足もつかないし、最後まで行けるわけがないのに、リクトを追いかけてぶらさがりたがり、もちろん、一瞬で力尽きると、なんの躊躇もなく、手を放して落下していた。
てんちゃんが、あわてて腕をのばす。

わたしたちがそばにいようといまいと、前しか見ずに、果敢なコツメ。うしろなどふりむかない。
自分の行く手に、なんの心配もない、あの根拠のない確信は、どこから湧いてくるのだろう?
リクトにも、てんちゃんにも、わたしにもない力だ。誰の遺伝子なんだろう?

劣性遺伝子として、わたしたちの中にも隠れているのなら、ブロックが外れる日がくればいいと思う。コツメの奔放な傍若無人さは、浜田家のともしびだ。

*   *   *

浜田家には、小さなセレスティーヌと、大きなセレスティーヌがいる(笑)
どちらも、わがまま自分勝手なので、アーネストは、タイヘンだ。

たとえば、大きなセレスティーヌは、家族で姫路セントラルパークに来ているのに、

「プールは絶対にイヤだから、おかあさんは市内に戻って、待っている」

と、別行動宣言をしたりする。

日陰でもあれば、プールサイドで荷物の番でもしようと思ったけれど、セントラルパークのプールゾーンは、さえぎるものなど何もない。そんなところで、ジリジリ焦げているなんて、とんでもない!

それでなくても、コツメはてんちゃんに

「おかあさん、さいきん、シミが濃くなってきたね」

などと言っているというのだ(!) 
 
だいたい、シミがどんなものなのか知ってるのだろうか? 
ホクロとシミとソバカスと色素沈着とクスミのちがいが、わかっているのだろうか? 
九歳のくせに。まったく(笑)

というわけで、《さいきん、シミが濃くなった》 おかあさんは、めでたくプールサイドの荷物番を免除され、美術館でアーネストシリーズを読むことができたのだった。わーい。

何が書きたかったかというと、

受けとることは、与えることで、与えることは、受けとることで、そんなことを意識せず、いつも循環していると傷つかない。

ということだ。
自分のなかに、アーネストとセレスティーヌを感じ、家族のなかに、アーネストとセレスティーヌを感じられる。
セレスティーヌの部分ばかりではしんどいだろうし、アーネストの部分ばかりでもしんどいだろう。
セレスティーヌの中にアーネストがいて、アーネストの中にセレスティーヌがいて、セレスティーヌとアーネストが循環するような、そんな幸福。

*   *   *

母になったことで、わたしが手にいれたものは、与えることと受けとることの循環サイクルかもしれない。
与えようと思わずにさしだしているから、ひらいた心に入ってくる。
受けとろうと思わずに受けとっているから、みたされて、あふれだす。
そういう循環ポンプだ。
からっぽじゃそそげないけど、からにしないと受けとれない。
与えることと受けとることのバランス。

しっかりポンピングしていた時期があったことを、懐かしく思う。
役割を演じているわけじゃないから、疲れない。
あのパワーは、今となっては神話。伝説。化石(笑)

*   *   *

コツメが帰ってきたので、こっそりきいてみた。
「キャンプに行ってるあいだ、おとうさんとかおかあさんのこと、おもいだした?」
「……」

(は! その沈黙は……)

微妙な顔をして黙っているので、笑ってしまった。
いっしょいっしょ! おとうさんとおかあさんもいっしょ!

「キャンプに行ってるあいだ、コツメのこと、おもいだした?」

と訊かれたら、わたしたちだって、
(どう答えたものか……)
と、同じ顔をして口ごもるだろう。

コツメが、何やらゴニョゴニョ言っている。

「え? きこえへん!」
「寝るときにね…」
「寝るときに?」
「えみなちゃんのこと思いだして、そこから、おとうさんと、おかあさんと、おにいちゃんのこと、おもいだした!」

えみなちゃんというのは、コツメが毎日抱いて寝ている、ぬいぐるみのうさぎだ。

浜田えみな




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テーマ : 物書きのひとりごと
ジャンル : 小説・文学

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浜田 えみな

Author:浜田 えみな
こんにちは! ブログに来てくださってありがとうございます! H11生まれの長男と、H14生まれの長女の二児の母です。文章を書くことが好きなので、フルタイムで仕事をするかたわら、あれこれ書いています。H26年8月に薦められた短歌にハマり、現在その世界観を模索中です。よろしくお願いします。