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前を向いて歩きなさい
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じんわり、その言葉は、
自分に返ってきた。

ワタシハ 
マエヲ ムイテ 
アルイテイルンダロウカ


***

「前を向いて歩きなさい!」

背後から、子どもを叱る母親の、かなり苛立ちを含んだ声と、子どもの笑い声が聞こえてきた。

「前を向いて歩きなさい!」

(マエヲ ムイテ)

前を向いて歩く……。

その母子の状況は見えない。小さな子どもって、前を向かないで、どこを向いて歩いているんだろう?
そう思うと、愉快だった。

じんわり、その言葉は、自分に返ってきた。

ワタシハ マエヲ ムイテ アルイテイルンダロウカ

***

その翌日、中学2年生の長女コツメ(仮名)の学期末三者懇談会だったので、二人で学校に向かった。
私たちの住むマンションから学校までは、川沿いの道を歩いていく。
草の間を、優雅に歩くシラサギ。少し小さめでクチバシの黒いコサギの姿もみえる。
勾配があるため、河川工事が施されている川は、コンクリートで固めた部分などが見えていて、首の太いカメが昼寝をしたりしている。
学校行事のときは、いつもこの道を、子どもたちと歩いてきた。
春、夏、秋、冬。
コツメは、ずいぶん背が伸びた。

「お母さん、昨日、ビーバーみたいなの、見た」

(ビーバー?)
(びーばー?)
(びぃばぁ????)


わたしの頭の中は、ビーバーの姿でいっぱい。

ビーバー? ほんとに?」
「大きなねずみやったかもしれん」

(ビーバー!)
(ビーバー!)
(ビーバー!)
(ビーバー!)


頭の中がビーバーの姿でいっぱいになった。

前歯
川に作るダム
ビーバーの巣


だいたいの大きさも浮かぶ。
見たこともないのに、不思議だが。
でも、まさか、ビーバーなんて。

イタチちゃう?」
「ちがう」
かわうそちゃう?」
「そんなにツルツルしてない。もっと毛がある」

ええっ

「かわうそ、知ってるの?」
「水族館で観た」

ええっ

「ビーバー見たことあるの?」
「教科書で」

ビーバー!!!
なんて、ファンタスティックなんだろう。
近所の川に、ビーバー。

(ビーバー!)
(ビーバー!)
(ビーバー!)
(ビーバー!)


頭の中は、ビーバーでいっぱい。
いっぱいだったが、学校に着いたので、懇談をしなくちゃならなかった。

(ビーバーーーーーーーーーーーっ……)

ビーバーのことばかり考えていたので、初めて会う担任の先生の顔も、気づけば前歯ばかり見ていた(笑) 
何歳だろう? 不詳だけど、プリントを示す左薬指にはプラチナのリング。社会の先生らしい。

それにしても担任の先生の名前は何回聞いても覚えられない。クラスと出席番号も。
リクトもコツメも、同じような出席番号なので、去年と今年がぐちゃぐちゃになるし、まあ、覚える気がないのだった。
懇談のあとは、帰り道にある店で、焼きたてパンを買うのが恒例になっている。
コツメはメロンパンが好きなのだ。新商品のチーズカレーパンも買った。
パンの袋を振りながら、川沿いの舗道へ。

(ビーバー)

姿が見えないかと、じっくり観察しながら歩く。

ビーバー見たいなあ

そう思って、じーっと川を観察するけれど、見えるのはカメばかり。

「あのね、あそこにいた」

(え)

「どこどこ?」
「あそこ」
「えっ、じっとしてたの?」
「うん」
「パッて、逃げたんじゃなくて?」
「うん」

(えーーーっ)
(じゃあ、見間違いじゃなくて、ほんとにビーバー?)

「じっとしてて、それからカメの上に乗った

(ええっ)
(カメの上?)


「どういうこと?」
「ビーバーの通り道にカメがいたから、乗り越えていったの」
「ええーーーっ それ、見てたの?」
「うん」

(ビーバーとカメ!)

(いいなあ、いいなあ、いいなあ)

「カメを乗り越えて? ビーバーが?」

(頭の中に光景がくっきり、うかぶ)
(カメを乗り越えていくビーバー…… 微動だにしないカメ……)

「行ってしまったの?」
「うん」
「長いあいだ見てたの?」
「うん」
「何時頃?」
「昨日、3時くらい」
「え、なんでそんな時間に?」
「懇談で、4時間授業で、クラブ早く終わったから」
「いいなあ~。おかあさんも見たいなあ」

(見たい見たい見たい)

目を凝らして、棲息していそうな場所では、立ち止まって、観察していたけれど、ビーバーらしき姿は見えなかった。

(昼間に来なければダメなのだろうか)

コツメとしゃべりながら、ずっと、川ばかり見て歩いている。

ふと、

前を向いて歩きなさいよ!

という声が思い出された。
可笑しかった。

お母さんに叱られていた小さい子も、何か気がかりなものがあって、それを見ながら歩いていたのだろうか。

わたしは、ビーバーに会いたくて、家に帰るまでずっと、横目で川を見ながら歩いているよ。
危ないよね(笑)

***

帰宅してから、ビーバーについて調べた。
コツメが2年生の国語で習ったのは、『ビーバーの大工事』だ。
小学校の教科書に掲載されている写真やイラストは、何故なんだろう? 大人になっても忘れない。
で、重大なことは、

(日本にビーバーはいるのか?)

考えられるとしたら、

(ペットが逃げた)

というものだけど、ビーバーを自宅で飼育できるとは思い難い。
調べてみても、日本には、やはりいないようだ。
姿が似ているものとして「ヌートリア」は、日本の川や田んぼでの目撃情報があると書かれていた。

(ヌートリア!)

画像を確認した。
大きなねずみかも」と言っていたコツメの目は正しかったのだ。

我が子ながら、たのもしい。
そして、歩いていて、とつぜん、「ビーバーみたいなの見た」と言われる生活。
毎日がファンタステティック!

前なんか向いて、歩けない。

浜田えみな
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プロフィール

浜田 えみな

Author:浜田 えみな
こんにちは! ブログに来てくださってありがとうございます! H11生まれの長男と、H14生まれの長女の二児の母です。文章を書くことが好きなので、フルタイムで仕事をするかたわら、あれこれ書いています。H26年8月に薦められた短歌にハマり、現在その世界観を模索中です。よろしくお願いします。